我々が実践する地域連携薬局としての取り組み-在宅短腸症候群患者に対する脂肪乳剤の供給を中心に
〇濱邉恵梨奈1、淵村佳奈1、隈元正太郎1、下山ひとみ1、楠元俊英1、武藤充2
1)すずな調剤薬局、
2)鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系小児外科学分野
当薬局は地域基幹病院の医師、在宅訪問診療医、訪問看護ステーションスタッフと患者支援情報を共有し医療連携をはかっており、在宅静脈栄養(HPN)を要する患者には輸液製剤、HPN関連物品、定期薬等を供給、管理栄養士が栄養指導も行っている。今回、短腸症候群患児らに対する地域連携薬局の取り組みとして脂肪乳剤供給の実例を中心に我々の活動を報告する。
本邦の静脈経腸栄養ガイドラインで「脂肪乳剤を投与しない静脈栄養管理下では、小児で約2週間、成人は約4週間で必須脂肪酸欠乏が発生する」と明記され、予防のため脂肪乳剤の使用は推奨度A(強く推奨)とされている。HPNを行う短腸症候群患児では、必要熱量の大部分を長期に静脈栄養に依存する場合も少なくない。しかし、このような患児に脂肪乳剤を在宅供給するにあたっては、小児HPN製剤、医療材料、脂肪乳剤も患児状態に合わせた製剤の供給が必要であり、未だ問題点が山積している。
我々は基幹病院医師とコンセンサスをはかった上で、HPNでの安全性・簡便性を考慮し脂肪乳剤をシリンジ分注し真空個包装して供給している。また患者居住地域にこのような対応が可能な薬局がない場合には、対象地域を拡大して遠方まで出張支援を行っている。
短腸症候群をはじめとする腸管不全症例において、長期の静脈栄養関連肝障害の主原因として大豆由来脂肪乳剤が疑われ、海外の主要先進国では魚油含有混合脂肪乳剤であるSMOFlipidが標準脂肪乳剤として導入されている。自験例ではSMOFlipidを輸入し使用している患児もいるが、非常に高額で経済的負担が大きいため、SMOFlipidを用いた栄養管理を断念してイントラリポスを使用しているケースを目の当たりにしている。脂肪乳剤を用いたHPN支援において日本は時代錯誤ともいえる現状にあるように思う。SMOFlipidをはじめとするω3系脂肪乳剤が早期薬価収載されるべく、患者家族と共に声をあげていきたい。