地域の調剤薬局との連携による在宅での医療用麻薬管理の工夫
¹公益財団法人慈愛会 かごしまオハナクリニック
²すずな調剤薬局
〇西方マリ子¹、林 恒在¹、隈元正太郎²
【はじめに】当クリニックは外来および在宅・施設療養者のかかりつけ機能を担っている。特に在宅医療の需要は顕著で、癌による終末期の在宅療養者の多くで医療用麻薬による症状緩和を必要とするが、その使用事例の増加に伴って、在宅現場における安心安全な麻薬管理上の様々な課題が生じてきた。
【目的】在宅現場における医療用麻薬の安心安全なしようと麻薬管理の新たな方法を模索する。
【方法】医療介護スタッフ、在宅患者、家族が皆安心して薬剤使用できる手段として、在宅患者への調剤実績豊富な調剤薬局との共働による医療用麻薬管理を実施した。患者は右腸骨骨腫瘍多発転移の90代女性で、看取りまで在宅療養を希望。癌関連の難治性の下肢痛に対する経口による投薬が困難となったため皮下持続投与への変更時点で同調剤薬局に依頼した。薬局保有の投与量モニタリングや料変更の遠隔操作が可能なデジタルデバイス(クーデックエイミーPCA®)を用いて、調合・配達・設置・開始までの一連の過程を包括的に依頼した。また開始時の薬液流量設定や疼痛悪化時のレスキュー使用方法、残量・積算量確認方法等は、薬剤師にて家族・本人・訪問看護師・クリニックスタッフで共有した。
【考察】本事例での使用経験を通じて、在宅現場における医療用麻薬の使用、管理に精通した薬剤師、調剤薬局との綿密な連携によって、当院スタッフだけで従来行ってきた薬剤の使用量確認や追加変更、デバイス更新目的の訪問頻度、薬剤投与に関するエラーを減らせること、利用者本人、介護者の薬剤投与に関する不安の軽減など、様々な利点を実感できた。一方で、デジタルデバイス使用に不慣れなことによる不安を抱く可能性や、一連のサービスに関する費用、利用者が増加した場合の薬局の対応許容度など、解決すべき様々な課題も想定され、使用経験の検証を重ねながら在宅現場におけるより安全な医療用麻薬管理を模索していきたいと考える。