『小児薬物療法認定薬剤師』
今回、認定薬剤師制度の1つである小児薬物療法認定薬剤師を紹介します。
私にとって、この認定は小児の医療上の特性、輸液、未承認医薬品の認可、脱水や検査値等の考察で非常に勉強になりました。実際に大人の在宅の現場でも輸液などの考え方に応用が効いて知識も増えた実感があります。
以下、試験に関する内容になります。
試験の情報はあまりネット上で探しても見当たらないので自分で勉強法を見つけるのが大変でした。
【取得までの流れ】
①申込→②研修会→翌年2月に研修会のキーワード報告→③5月に試験→④9月に学会参加してレポート提出→⑤結果のメール通知→⑥申請
【①申込時期】
・4月中旬
・小児薬物療法研修会(新規認定取得のための研修)
・開催日(開始日): 2022/07/01
・受講(受験)料: 55000円
【②研修会】
・7月1日から始まります。毎月、研修会があり、公開時期は2ヶ月間なのですが、2月にまとめて各研修会を視聴できキーワードを確認できます。
(今後、変更されるかもしれません)
【③試験】
・設問 70問(マーク数は100くらい)
・難易度→勉強しないとおそらく普通に落ちると思います。合格ラインがどれぐらいか情報が開示されてません。もしかすると合格ラインがすごく低いかもしれません。
・受験者層も20-30代前半が多い印象でした。
以下に覚えてる範囲での問題の傾向、おさえるところを記します。
・低出生体重児~小児の定義
・こどもの特性 例 ブリナツモマブ
・DOHaD説
・希少がんの集合、小児がんの生存率
・腎排泄;早産児、正規産児 血清クレアチニン
・胎児薬物代謝酵素系の特徴
・薬力学から見た小児の特徴;新生児期と乳幼児期
・小児が成人に比べて低値になる項目;クレアチニン→筋肉量が関係している。
総蛋白、アルブミン→新生児期は細胞外液が多くむくんでいる
・小児が成人に比べて高値になる項目③;LDH(小児の代謝が亢進している),ALP(骨代謝が亢進している)、AST(成人の倍)、ALTは成人と変わらない。γーGTPは胆汁うっ滞の影響で乳児期に高値
・AST,ALTの局在に関する誤解
・AST,ALTの細胞内の局在;ミトコンドリア・・AST>ALT
・劇症肝炎の終末像や、肝硬変末期にはAST,ALT低値
・中毒性肝障害、特異体質性肝障害
・p-iコンセプト
・代謝性肝障害
・チトクロームP450の変異;オメプラゾール、ポリコナゾール
・AIMS
・小児の細菌性髄膜炎の年齢別起因微生物;GBS、Hib、肺炎球菌、髄膜炎菌
・小児の肺炎の年齢別起因微生物;百日咳、マイコプラズマ、結核
・最大量を用いることの重要性
・溶連菌咽頭炎の治療;基本はペニシリン
・小児市中肺炎における原因微生物;生直後~20日、3週~3ヶ月
・添付文書の上限値が欧米の通常投与量程度
・第2世代セフェム→大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌をターゲット
・経口第3世代セフェムの問題点;ピボキシル基を有する薬剤が多い→低血糖
・第4世代セフェム
・クラリスロマイシン→百日咳に適応がある
・ミノサイクリン→Mg,Alなどどキレートを形成し吸収が低下する
・トスフロキサシン;テオフィリンと併用でテオフィリンの血中濃度上昇
・小児マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考えかた→効果は投与後2~3日以内の解熱で評価できる
・ST合剤→低出生体重児、新生児には禁忌
・抗真菌薬;造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防
・ボリコナゾール;特徴的な副作用として霧視、肝機能障害
・感冒薬;鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は熱性痙攣の持続時間を長くする可能性があり推奨されない。
・日本の現状と課題;若年女性低体重の増加、低出生体重児の増加(出生体重2,500g未満)
・日本出生数年次推移;令和2年1.34
・各国によけるこどもの割合;日本11.7% 問題は20%と出題
・性別にみた出生時平均体重及び2500g未満出生数割合の年推移;平均体重は男女とも近年は横ばい
・約40年間推移のまとめ;出生体重↓と低出生体重率%↑の関係が出題
・DOHaD説とBarker仮説の違い;内容を理解する
・胎児の味覚;妊娠8~15週頃で味蕾が観察、羊水中で味覚が形成される
・妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
・初乳と成乳
・母乳育児の利点ー乳児
・母乳育児の利点ー母親
・赤ちゃんにやさしい病院
・母乳育児の留意点;ビタミンKの不足、経母乳感染、鉄の含有量
・ケイツーシロップ投与
・経母乳感染;サイトメガロウイルス
・鉄;乳児期コウキに、貯蔵鉄不足による鉄欠乏性貧血をきたすことがある
・乳児用液体ミルクについて;~に対する提言、声明
・日本小児科学会の提言;何よりも大切なことは、あくまでも液体ミルク。乳児用は母乳代替食品であり、平時でも災害時も、乳児に推奨されるのは母乳です。
・離乳支援の方法
・乳児ボツリヌス症への注意喚起;ハチミツ
・食物アレルギーのページ
・薬物の母乳移行に関与する因子
・母乳移行量の指標;母乳中と母乳血漿中の薬物濃度の比 M/P
・RID;多くの薬物がRID1%程度であり、10%を超えなければ概ね許容範囲とされる
・抗インフルエンザ薬の授乳に関する情報;一般名ですべて覚える
・こども;太く短い体型 体表面積が大きい
・こども;総水分量が大きく、細胞外液の量も多い
・腎機能の未熟性; 生直後:濃縮能は成人の1/2。GFRは成人の1/5→容易に高張性脱水になる
・成人と異なる水分管理が必要;成人用の標準的な経腸栄養剤をしようすると脱水となる。
・成長には多量のエネルギーが必要;体重あたりのエネルギー必要量 生直後 成人の3~4倍
・必要エネルギー量が大だが~;容易に低血糖・栄養不良になる
・小児では脳への影響も
・低血糖の脳への影響
・静脈経腸栄養ガイドライン;2週間以内:末梢、2週間以上:中心静脈
・栄養投与経路の選択;使えるなら腸を使え
・PICC
・中心静脈カテーテルの種類;長期留置用 カフ付留置型カテーテル
・上大静脈内に留置;どのタイプ
・炭水化物;生後3ヶ月まで膵アミラーゼ活性低い、母乳中の95%は乳糖
・タンパク質を分解する酵素は?;胃液 ペプシノーゲン(酸性でないと活性が)、膵液
・蛋白質(1);母乳中の蛋白質の60%はホエイ蛋白
・蛋白質(2);出生後数週間まで 免疫グロブリン(IgA)の産生が少ない
・タンパク質(3);小児ではアルギニン、システイン、タウリン、チロシン
・加えてグルタミンは~;乳幼児~、亜鉛欠乏でも~
・蛋白質(4);成人:NPC/N比=150,小児:NPC/N比=200~250
・脂質(1);生後3ヶ月前後まで高いのは→舌リパーゼ活性(さらに母乳中には胆汁酸塩促進性リパーゼが含まれており、脂肪の分解は非常に良い)
・脂質(2)補足;人間の母乳に含まれるDHA量と同量与えられた場合に得られるDHA濃度と同じ濃度まで上げることはできない
・脂質(2)脂肪組成の特徴;ω-3系脂肪酸は脳、神経系の発達維持に必要
・これ以降の問題については時間があるときに記載します。(現在、2割くらいです。)
・
・
【④レポート】
学会(9月30日)が終わって5日後(10月5日)に提出しましたが、通知がかなり遅いです。早めに出すほど損かも。時間をかけて調べてじっくり書いた方が良いです。年明け1月18日朝8時にレポートの評価の結果が返ってきました。→不合格。→再提出3月31日夕方6時(前回、早めに作成し提出したので・・・)→合格メール4月16日→認定申請4月18日→5月1日認定メール受信。
様式に《参加した学会のプログラム(講演、シンポジウム、一般演題等)から選定》とあったのでシンポジウム2の1つを選び記載しました。
この選び方がそもそも間違いでシンポジウム2全体について記載しなければなりませんでした。よって再提出では4つ演題のあるシンポジウム2を自分なりにまとめて記載し再提出して通りました。選定する項目も講演、一般演題なら一つしか選べないので、シンポジウムもそのように演題を1つ選択して書くものと自分なりに間違った解釈をしてしまいました。審査は少し厳しめでした。
以下にレポートの内容を少し載せます。
小児PECS様式第6
小児薬物療法認定薬剤師
日本小児臨床薬理学会参加報告(新規認定のためのレポート)
【参加した学会回数・参加年月日】第1回(参加年月日西暦2023年9月30日)
【選定したプログラム】シンポジウム2新生児薬物離脱症候群(NAS)
【選定したプログラムの概略と論点】NASは、妊婦が服用している薬物や嗜好品が胎児へ移行し、出産を契機に胎児への暴露が中断されることでけいれんや息を止めるなどの一時的な症状を発生する症候群とされている。この主な原因薬剤として抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗てんかん薬等が挙げられる。NASを発症した症例は多剤併用症例が多く、併用薬剤としてベンゾジアゼピン系が最も多くみられたことから薬剤選択が重要である。一方、性差、在胎週数や出生体重がNASの離脱スコアと関係する。もしくはなしとする報告がある。今回の発表では離脱スコアに性差、在胎週数・出生体重に有意な関連は認められなかった。また新生児離脱スコアと睡眠薬の内服数との間に優位な関連を認めた。しかしこれらの有意差を完全に証明するには投与期間やその他の因子が関与することから数だけで相関が見られたとの判断は性急すぎるのではないかとの指摘もあがった。臨床では、てんかん合併妊娠例に対する周産期管理で、発作を減らすために薬の選択と母への正しい情報提供が出来る体制構築、血中濃度モニタリング、プレコンセプションとしての薬剤師の介入の重要性が発表された。また近年、妊娠中のうつ病の罹患頻度が多く、薬剤の妊娠末期暴露による新生児の影響については日本での報告例は少ない。妊娠期のリスクベネフィット評価において新しいデータソース、方法論を確立し、多くの研究を進めることでの多くの知見の蓄積が重要である。
【関連論文の検索と考察】
NASは、薬剤の児への影響を過度に懸念し服薬を中断することなく、産科・新生児科・精神科で連携を取りながら治療継続を考慮していくべきである。これにはNASを起こしやすい薬剤や嗜好品を確認して、出生後から新生児薬物離脱症候群のチェックスコアをつけ、治療が必要かどうかを決めることが重要である。この症候群を発症する頻度の高い新生児の早期発見には、妊婦の常用している薬物や嗜好品を問診により聴取することが不可欠である。多剤使用、喫煙やアルコールはその頻度を上げる1)。そして、この症候群発症の可能性のある児においては、チェックリストスコアを経時的に記載する。チェックリストスコアは、Finneganスコア2)、Lipsitzスコア3)が国際的には知られているが、そのスコアを簡略化した簡易型Finneganスコア4)、磯部スコア5)が有用である。現在、日本ではFinneganスコアと磯部スコアが使用されているが、Finneganスコアは元々オピオイドで使用されており、睡眠剤、抗うつ剤で開発されていないことから磯部スコアが広く利用されているが、国内でのスコアリングの統一、その際の点数の閾値を明確に決められていないことが質疑応答の中で触れられ、お互いに8点の段階で重篤な児がいるので一つのカットオフ値の目安となっている。このことから統一されたスコアリングを用いて早期の治療を行うことで、母親の児に対する不安感の除去および児の症状の重篤化を予防できると考える。
※関連論文の検索と考察の部分は上記の内容で酷評されました。
<認定者数>
2020年
814名(3/1)
2022年
612名(6/30)、734名(9/30)
2023年
847名(3/31)、865名(6/30)、938名(9/30)
2024年
990名(3/31)
今年の受験者は250名近くいましたが、今までの認定者数から推測しても試験の合格率と難易度が分かりません。
・時間 110分
・試験日 2023年5月20日(日) 東京へ日帰り
・発表日 7月5日
10時46分にメールで合格通知がきました。PECSを確認したら反映してます。会場では合否通知は7月初めとしか言われず、どこにも詳細な合格発表日がないため困惑🤔
・試験勉強開始時期→GW明けてから、1日4時間から12時間。合計70時間くらい。
(仕事や学会以外はすべて勉強にあてました)
・自己採点→70-95%(何も対策しないと、この逆くらいのレベルの設問内容)
【感想】
設問数に対し時間が少なくギリギリ、見直す時間も少なく5分前くらいに解き終わりました。
設問内容は
・次の中から正解を1つ(2つ)選択せよ。
・次の中から間違いを1つ選択せよ。
内容を理解してないと解けない問題が多い気がしました。
確実に解けなかった問題が3題(血糖値に関する計算問題とか、、、)
業務上で短腸症候群や中心静脈栄養に携わっているので、実務における経験が役立ちました。
ただ新薬に関する設問や最後の方は実務で関わらないと分からない、研修でも聞いたことがないような問題が、、、抗体医薬品の記憶を辿ってマークしたら正解でした🤭
【勉強方法】
試験勉強の中心は、研修会(web)の視聴より研修添付のスライド(約2400枚)でした。
36タイトルあり、数が多く幅広いですが一通り勉強すると実務に役立ち考え方の幅が広がります。
要点だけをまとめて理解しながら勉強し、当たり前ですが、覚えるところは覚えて理解するところは理解。結局、試験までに8-10巡しました。
試験直前はiPadのGoodNotesにまとめたスライドを使って1時間で36タイトル振り返るくらいのペースで対策しました。